静岡新聞が記者コラム「風紋」に掲載してくれました。私の思いと重なりました。
2020年7月1日静岡新聞より引用
「風紋」
再発防止 今後が正念場
浜名湖で2010年に県立三ケ日青年の家(浜松市北区)のカッターボートが転覆し、海洋活動中だった愛知県豊橋市立章南中1年西野花菜さん=当時12=が死亡した事故は6月18日、発生から10年を迎えた。再発防止に取り組む両親や施設関係者は風化を懸念している。いかに教訓を生かす、これからが正念場と言える。
ボートの出港時、大雨、雷、強風、波浪、洪水の各注意報が発令されていたにもかかわらず、誰ひとり待ったを掛けられなかった。
教員に判断を求めるのは酷であり相談できる専門家の配置が望ましいとの指摘を耳にする。ただ、事故は専門知識の不足が招いたというより、後から考えれば「まずい」と分かるような悪条件が問題にされなかったことにあり、専門家の助言があったとしても、あくまでも現場の判断の補助であると考えたい。
引率する教員の誰か一人が「本当に大丈夫だろうか」と疑問を抱くことが第一歩ではないか。上司である校長に進言することは通常ははばかれるだろう。ただ、子どもの命と引き換えにはできない。普段から教員間でコミュニケーションを心掛け、風通しよい雰囲気をつくっておきたい。
数年前、名古屋市の大学教育学部で西野さんの父、友章さんが事故の教訓について講義した際、一人の女子学生が「おかしいと思ったら、空気に流されず声を上げる勇気を持ちたい」と言っていたことが強く印象に残っている。現場の先生がアンテナを高く持つだけでなく、意見した先生が不利益を被るようなことを防ぎ、守っていくシステムが必要だ。
近年も学校管理下における類似の事故が繰り返されている。2017年に栃木県で高校生ら8人が死亡した那須雪崩事故、18年に愛知県豊田市の小1男児が校外学習後に熱射病で死亡したケースなどだ。気温や積雪などの状況をどう把握していたのか、疑問が残る。
教訓を全国で共有し、再発防止に生かす態勢づくりが、今後ますます欠かせない。
(豊橋支局・遠藤竜哉)
(引用おわり)