事故から12年が経ちました。花菜が生きた12年間と同じ歳月が流れました。組織が変わる中で、時間の経過が事故の風化につながらないよう、このような取り組みは必要です。決して忘れてはいけない教訓があります。今年は事故現場で直接関係者に、安全の強化を訴えかけました。
2022年6月18日
西野友章
花菜の命を感じながら
12年前の今日、花菜はここにいました。今、同じ日にここにいて、私は、花菜の息使いのようなものを感じています。同級生たちとボートを漕ぐという初めての経験を前に、わくわくしている花菜を想像しています。そして、前日に、「夢があるっていい」と、自然体験学習のしおりに書いたまま死んでしまった、花菜の悔しさを考えています。
私は、事故以来初めて、6月18日に、ここに立つことができました。今日、ここにいて浜名湖を見ると、花菜を失った悲しみがまたあふれそうになります。しかし、それ以上に、花菜の死を教訓としていかしてほしいという思いを強く感じております。
2010年6月18日、ここで何が起きたのか、なぜ大人たちの前で子どもが死んでしまったのか、何が足りなかったのか、どうやったら防ぐことができたのか、風化させてはいけない教訓がここにはあります。そして、事故を経験した静岡県立三ヶ日青年の家だからこそ出来ることがあると思っております。
今日、花菜の命日は、夢を語っていた花菜の命を感じながら、重たい犠牲を払って得た教訓を未然防止につなげるために、安全への取り組みを強化する日であってほしいと思います。そして、県内の野外教育施設がより一層、安全で安心な場所であり続けるために、不断の努力を誓う日であってほしいと思います。ともに活動します。どうぞよろしくお願いいたします。
<静岡新聞(2022.6.17)より引用>
風化懸念 追悼行事初参加へ
花菜の命 無駄にしないで
浜名湖で2010年、県立三ヶ日青年の家(浜松市北区)のボートは転覆し愛知県豊橋市章南中学1年の西野花菜さん=当時12=が亡くなった事故は18日、発生から12年を迎える。青年の家で同日開かれる追悼行事に、西野さんの父友章さんが初めて出席する。事故の教訓が風化する危機感から「花菜の命を無駄にしてほしくない。私が直接訴えたい」と参加を決めた。
事故当初は「浜名湖を見るだけで心が落ち込んだ。雨が降っていたら悔しさと怒りが込み上げ、近づけなかった」という友章さん。20年に59歳で亡くなった妻光美さんは、最後まで浜名湖を見ることができなかった。毎年6月18日には、花菜さんが大好きだったカルボナーラを自宅で作るなど「同じ時間を過ごしてきた」。
花菜さんの命日に現場を訪れる決意を固めたのは「薄れていく記憶を思い起こさせる」という使命感から。教員や教職員、施設職員は年月とともに異動で入れ替わり、行事が徐々に形式化していく不安がぬぐえないという。「組織に循環は必要だが、教訓を伝えることに節目や終わりはない。子どもの命を預かる立場を自覚してほしい」との思いを強くしている。
花菜さんが生きた12年間と同じ月日が経過した。浜名湖を目にしながらも、心の痛みと再発防止を願う気持ちを切り分けられるようになっっという。当日は、自らの声と言葉で思いを伝える。「花菜は何も悪くないのに、大人の言うことに従った結果命を落とした。事故の背景や当時の判断を改めて考える機会にしてほしい」。
県教委社会教育課の藤ヶ谷昌則課長は「メッセージを直接いただくことで、事故を二度と起こしてはいけないという思いを関係者全員で共有したい。青少年教育施設の安全への取り組みを強固にする日とする」と述べた。
<引用おわり>
<静岡新聞(2022.6.19)より引用>
浜名湖のボート転覆12年 現場、学校で追悼
花菜さん失った教訓 つなぐ
浜名湖で2010年に県立三ヶ日青年の家(浜松市北区)のボートが転覆し、愛知県豊橋市立章南中1年の西野花菜さん=当時12=が亡くなった事故は18日、発生から12年を迎え、青年の家と同校で追悼行事が営まれた。関係者が西野さんの冥福を祈るとともに、再発防止に向けた決意や安全確保の重要性を改めて確認した。
青年の家では県教委の関係者ら約20人が、西野さんをイメージした少女の慰霊像の前で黙とうをささげた。池上重弘教育長は「安全は全てに優先すると言う信念で、青少年教育施設とこれまで以上に強い連携を図る」とあいさつした。
この日の天気は12年前と同じく雨。事故後初めて出席した西野さんの父友章さんは
「当時の写真の空模様と同じ。思い出してしまった」と本音を吐露した。それでも「重たい犠牲を払って得た教訓を事故の未然防止につなげるため、安全への取り組みを強化する日にしてほしい」と願った。
式典後の救助訓練では落水者を救助艇で搬送し、海洋活動を中止し帰港するまでの手順を確認した。青年の家の御園崇所長は「安全意識を維持するだけではなく、より向上させる」と述べた。
章南中では生徒と教職員が命について考える活動を行なった。青年の家の前所長城田守さんが講演し「仲間や家族は宝物。互いを思いやり、大切にしてほしい」と訴えた。教職員には「主人公である子どもを第一に考え、安全のために行動する勇気を持って」と説いた。
生徒は黄色い風船をさらに放ち、西野さんを悼んだ。生徒会長の鈴木莉依さんは「章南生徒として花菜さんのことは忘れてはいけない。この思いを後輩に受け継ぐ」と誓った。
<中日新聞(2022.6.19)より引用>
父「花菜の死教訓に」
浜名湖ボート事故12年で追悼式
浜松市北区の浜名湖で集団訓練中のカッターボートが転覆し、愛知県豊橋市立章南中1年の西野花菜さん=当時12=が亡くなった事故は18日で12年を迎えた。現場近くの静岡県立三ヶ日青年の家であった追悼式では、花菜さんの父友章さんが初めて出席。悲惨な事故が繰り返されないよう訴えた。
「12年前の今日、花菜はここにいました。私は、花菜の息遣いを感じています」。友章さんは、青年の家ロビーに設置された花菜さんの慰霊像の前で、参列者約20人に語りかけた。「花菜の死を教訓として生かしてほしいという、強い思いを感じます」
最期まで浜名湖を見るのを嫌がっていたという花菜さんの母光美さんが、2020年12月に死去。一人になった友章さんは「事故を風化させてはいけない」と言う思いから、追悼式への出席を決意した。
事故は10年6月18日、青年の家に校外学習に来ていた章南中1年生ら20人が乗ったボートが荒天で航行不能となり、えい航中に転覆。花菜さんがボート内に閉じ込められ、亡くなった。
静岡県教委は12年、事故が起きた日を「安全確認の日」と設定。毎年、この日に青年の家で追悼式を開いており、昨年から水難救助訓練も行うことにした。
断続的に雨が降る中、訓練に立ち会った友章さんは湖面を眺め、「事故直前の花菜の写真にも、こんな曇り空が写っていた。この日、この天気の浜名湖畔に立つと、どうしても事故を思い出してしまう」とつぶやいた。
<中日新聞(2022.6.19)より引用>
豊橋・章南中 西野さんの追悼行事
「一日一日大切に生きる」誓う
浜松市の浜名湖での野外活動中にボートが転覆し、豊橋市立章南中学校の西野花菜さん=当時12=が犠牲となった事故から12年を迎えた18日、同市老津町の同校で追悼行事があった。生徒と教職員が命の大切さを考えるとともに、再発防止を誓った。
全校集会で出席者全員が黙とうを捧げ、鈴木孝昌校長は「自分の命を自分で守る。守った命を誰かのために役立てる、ということを意識してもらいたい」と呼びかけた。
その後、生徒は「一日一日を大切に生きる」などと書いたカードをつけ、西野さんが好きだった黄色の風船を中庭から飛ばした。生徒会長の3年鈴木莉依さんは「花菜先輩のことを忘れずに、これからも受け継いでいきたい」と話した。
事故は2010年、章南中の1年生18人と引率教諭2人が乗ったボートが悪天候で転覆し、船体内側に閉じ込められた西野さんが亡くなった。豊橋市は6月18日を「豊橋・学校いのちの日」と定め、毎年この日を中心に、全小中学校で命にまつわる取り組みをしている。
<東愛知新聞(2022.6.19)より引用>
心に刻む「命の大切さ」
メッセージ付き風船放つ
浜名湖での野外活動中にカッターボートが転覆し、豊橋市立章南中学校1年生の西野花菜さん=当時12=が亡くなった2010年の事故から12年目の18日、同校では黄色い風船を空に飛ばし、全校生徒274人が花菜さんの冥福を祈った。
風船には生徒それぞれが命を大切にする決意をしたためたメッセージカードが付いている。黙とうを終えた午前11時半ごろ、教室の窓から生徒が風船を放った。
3年で生徒会長の鈴木莉依さんは事故のことを振り返り「自分の夢や思いを大切にしていきたい」と語った。メッセージカードには「周りも自分も大切にして、夢に向かって真っすぐ進んでいきたい。常に感謝を忘れず、いつも精いっぱい、命の炎を燃やし続けていきたい」と書いたという。鈴木孝政校長は「毎年、安全管理を常に更新している。反省を行動で示したい」と話した。
午後からは「静岡県立三ヶ日青年の家」の運営に携わる「シップマン」代表取締役の城田守さんが命の大切さや危険を知ることについて「中止する判断ができれば防げたものが多い。惰性や中止できない雰囲気の中でやることが一番良くない」と語った。
市内の小中学校では18日を「豊橋・学校いのちの日」として危険防止や安全啓発に取り組んでいる。
<東日新聞(2022.6.19)より引用>
夢を持ち、命を大切に生きて
西野花菜さん追悼行事
章南中学校で「学校いのちの日」
豊橋市老津町の市立章南中学校(生徒274人、鈴木孝昌校長)で18日、「学校いのちの日」の行事が行われた。2010年6月18日、静岡県浜松市で行われた野外活動中にカッターボート事故で亡くなった西野花菜さんを追悼する行事。生徒たちが授業や講演を通じて「いのちの大切さ」と花菜さんが生前口にしていたという「夢のすばらしさ」を学んだ。
行事は、事故の風化を防ぐため、毎年開催。今年も全校生徒が参加した。
メッセージカードを付けた風船を飛ばす「バルーンリリース」では、生徒たちが「強く命の炎を燃やし続けよう」と詩「命の炎」を声を合わせて読み、いのちや夢に対する自らの決意を書いた風船を空に放った。
行事に参加した鈴木莉依さん(3年)は「事故については中学入学後詳しく知った。花菜先輩のことをずっと生きた話として伝えたい。夢があるっていいな、という言葉を大切に、生きる決意を花菜先輩に届けたい」と話した。
講演では、事故の際救助活動に携わったシップマンの城田守代表取締役が、花菜さんが事故当時着ていたライフジャケットを見せながら「自分のいのちも、他人のいのちも、すべてかけがえのないもの」などと生徒たちに呼び掛けた。